理事長挨拶
一般社団法人
日本痛風・尿酸核酸学会 理事長
(独立行政法人国立病院機構 米子医療センター 院長)
久留 一郎
この度、金子希代子前理事長から引き継ぎ、一般社団法人日本痛風・尿酸核酸学会の第9代理事長を拝命いたしました。副理事長の市田公美教授、山内高弘教授、庶務幹事の細山田真教授とともに学会の運営に携わらせいただくことに成りました。振り返ってみれば歴代理事長の方々はまさにわが国を代表する先生ばかりであり、私ではいかにも役不足の感は否めませんが、まことに光栄に感じておりますとともに身の引き締まるおもいであります。浅学非才の身ながら、本学会の代表に選出いただきました上は、名誉会員の先生方が築かれた本学会の伝統を継承しつつ、さらに発展してゆきますように専心努力して参りますのでよろしくご指導ご鞭撻の程お願い申し上げます。
学会のあゆみ
尿酸並びにその前駆物質を含めてプリン代謝やピリミジン代謝の研究は我が国が世界をリードしてきた領域であります。本学会は昭和52年に御巫清允先生のもと設立された「尿酸研究会」として始まりました。御巫清允先生、赤岡家雄先生、中村徹先生、東野一彌先生、小笠原信明先生、細谷龍男先生、上田孝典先生、金子希代子先生と歴代理事長がリーダーシップを発揮され、今年で46年と長い歴史を有しています。そのため、学会名称も「日本プリン・ピリミジン代謝学会」「日本痛風・核酸代謝学会」、「日本痛風・尿酸核酸学会」と変わってゆきました。本学会は、基礎並びに臨床の幅広い研究活動を推進し、社会貢献活動を通じてわが国における痛風・高尿酸血症の診療に向けた尿酸・核酸代謝研究の発展を支えてまいりました。我が国の痛風患者は125万人に達し、高尿酸血症も1000万人と経年的に増加し本領域の研究診療の重要性はますます増しており、本学会の果たすべき役割は、重大であると認識しております。
学会活動の現状
本学会活動の使命は、尿酸・核酸代謝の基礎研究を基盤として高尿酸血症・痛風および核酸代謝疾患の病態解明と正確な診断、有効な予防、有効かつ安全な治療の開発を通じて患者さんとその家族に質の高い生活を届けることです。その使命の実現のためにこれまで学術集会を発展させ、学会誌を介して情報を発信し、認定痛風医を育成することで我が国の診療を促進してきました。学術集会は一貫して基礎・臨床領域の学者が年1回一堂に会し情報を共有する形式を継続することで、基礎医学と臨床が融合した学問の進歩が図られていることは特筆に値します。本学会活動を通して核酸代謝酵素であるPRPP, XOR, HGPRTase, AMP deaminaseやピリミジン代謝に関する基礎研究の発展、FJHN、APRT欠損症、キサンチン尿症、筋原性高尿酸血症、腎性低尿酸血症等の病態解明が次々になされ、近年は尿酸トランスポーターの発見やGWAS等を用いた世界的研究が生まれてきました。今後も、本学会活動から新たな学問展開が期待されます。また、認定痛風医資格制度により医療専門職の教育・研修が充実し、患者さんへの啓発が図られ、高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン作成が世界に先駆けて成され、ガイドライン作成法の進歩に従って改定を重ねることで我が国の高尿酸血症・痛風診療のスタンダードとなっています。
Diversity and Inclusionを目指した取り組み
学会員の増加と学会活動の多様性を促進するためにさまざまな委員会が活動しています。我が国の学会の近年の潮流に則して、金子前理事長のご尽力で新たな委員会が設置されました。若手委員会が発足し痛風・尿酸・核酸研究に興味を持つ若手研究者が集い活発な学術交流やTwitterを通しての情報発信、他の学会とのジョイントシンポジウムなどの試みを通して若手医師に魅力を感じて貰えるような学会づくりを模索しています。ダイバーシティー推進委員会が発足し、学術集会のプログラムの中に多職種シンポジウムが企画され、コメディカルの参加を促進しています。学会会期中は託児室が設けられ、女性研究者が参加しやすい環境づくり、女性研究者の育成や座長経験を増やす試みを行っています。編集委員会は学会誌の掲載論文数の増加と質の向上によりアクセス回数の増加を図り、当学会のプレゼンスを高めています。ガイドライン広報員会を通じてガイドラインの普及がなされ社会的なインパクトが向上してきました。またオンラインでのweb講演会が年2回企画され、会員の知識のアップデートと情報共有が促進されています。今後は学術交流委員会が発足し、当学会に関連のある複数の学会との連携が図られ、領域を超えての痛風・尿酸核酸学の発展が期待されます。これらの委員会活動により異分野融合による基礎・臨床研究の推進、若手や女性研究者の育成、webを介した海外研究者との交流、ガイドライン改訂の準備などを着実に進めることが出来るようになり、学会員が増加するのではと期待しています。
いずれも会員の皆様のご協力なくては成しえないものばかりで、会員の皆様のご指導並びにご支援をお願いいたします。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
令和5年2月23日
一般社団法人 日本痛風・尿酸核酸学会
理事長 久留 一郎